皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。
交流の問題では、実効値・平均値・波形率・波高率が並んで出てきます。\( 1.11 \) や \( \sqrt{2} \) といった数値を表のまま丸暗記して、どれがどの比だったか分からなくなる方も多いようです。
ただ、覚えておくべきものはこれらの数値ではありません。実効値の定義さえ押さえておけば、波形率も波高率もその場の割り算で出てきます。
本記事では実効値の定義から出発して、正弦波・方形波・三角波を同じ手順で扱います。最後に令和4年度下期 問8と令和7年度下期 問14で、実際の出題にそのまま使えることを確認します【PR】。
📌 この記事でわかること
- ✓ 実効値の定義(二乗 → 平均 → 平方根)と、なぜ二乗から始めるのか
- ✓ 正弦波の3つの値(最大値・実効値・平均値)と、そこから割り算で出る波形率 \( 1.11 \)・波高率 \( \sqrt{2} \)
- ✓ 方形波で考えれば、数値を覚えていなくても大小が決まる理由
- ✓ 令和4年度下期 理論 問8(波形率・波高率)の解き方
- ✓ 令和7年度下期 理論 問14(整流形電圧計)で、実効値をそのまま答えると外れる理由
実効値も「平均」のひとつです
実効値と平均値を「まったく別の量」として切り分けて覚えていると、波形率の問題で手が止まります。何を平均するかが違うだけであり、実効値も平均のひとつと考えると以降の理解がスムーズになります。
実効値
出発点は、抵抗が消費する電力の式になります。抵抗 \( R \ \mathrm{[\Omega]} \) に交流電流 \( i \ \mathrm{[A]} \) が流れているとき、その瞬間の消費電力 \( p \ \mathrm{[W]} \) は次のとおりです。
\[
\begin{aligned}
p &= Ri^{2}
\end{aligned}
\]
交流電流は時間とともに変化するので、平均の消費電力を求めるときは、1周期 \( T \ \mathrm{[s]} \) にわたって平均をとります。
\[
\begin{aligned}
P &= \frac{1}{T}\int_{0}^{T} Ri^{2}\mathrm{d}t = \frac{R}{T}\int_{0}^{T} i^{2}\mathrm{d}t
\end{aligned}
\]
同じ抵抗にある一定の電流 \( I \ \mathrm{[A]} \) を流したときの消費電力は \( P = RI^{2} \) です。この2つの消費電力が等しくなるように \( I \) を決めれば、その一定の電流は交流と同じだけ発熱することになります。両辺から \( R \) が消えて、次の形が残ります。
\[
\begin{aligned}
RI^{2} &= \frac{R}{T}\int_{0}^{T} i^{2}\mathrm{d}t \\
I &= \sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T} i^{2}\mathrm{d}t}
\end{aligned}
\]
この一定の電流を交流の範囲で考えたものが実効値の定義です。二乗して、平均して、平方根をとる。順番はこの3手だけとなります。
二乗した波形は \( 0 \) と \( {I_{\mathrm{m}}}^{2} \) のあいだを振れます。平均線から上へはみ出した分と、下に空いた分がちょうど同じだけあるので、平均は真ん中の \( \dfrac{{I_{\mathrm{m}}}^{2}}{2} \) になります。あとは平方根をとるだけで、実効値 \( \dfrac{I_{\mathrm{m}}}{\sqrt{2}} \) が出ます。
覚えるのはこの図の流れだけで十分です。抵抗の発熱で定義されているので、電力が電流の2乗に比例するという性質がそのまま実効値の形に出ています。この構造は変圧器の銅損とまったく同じで、負荷で変わる損失と変わらない損失の切り分けについては鉄損は一定・銅損は電流の2乗に比例する理由で整理しています。
平均値
一方の平均値 \( F_{\mathrm{av}} \) は、波形そのものを平均した値です。ただし正弦波を1周期そのまま平均すると、正の半分と負の半分が打ち消し合ってゼロになってしまいます。そのため交流でいう平均値は、全波整流した波形(絶対値)の平均を指します。
\[
\begin{aligned}
F_{\mathrm{av}} &= \frac{1}{T}\int_{0}^{T} \left| f(t) \right| \mathrm{d}t
\end{aligned}
\]
実効値の方は二乗した時点で符号が消えるので、絶対値をとる操作が要りません。実効値の方の定義に絶対値が出てこないのはそのためとなります。
なお、電験3種でこの積分そのものを計算させられることはありません。積分が実際に必要になる範囲については電験で微分積分はどこで使う?にまとめてあります。
補足:積分が顔を出す出題でも、公式は問題文が用意してくれます
- 実効値の定義式の積分は出ませんが、平均値のほうを積分で求めさせる出題はあります。令和8年度上期 機械 問16(b) がその例で、三相ダイオード全波整流器の出力電圧について、脈動率(最大値と最小値の差を平均値で割った値)を求めさせます(解説)
- この平均値を出すには積分が要ります。ただし問題文に \( \displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}\sin\theta\mathrm{d}\theta = -\cos\beta + \cos\alpha \) が添えてあるので、受験者は上端と下端を代入するだけで済みます(答えは \( \delta_{\mathrm{d}} ≒ 0.14 \))
正弦波の3つの値さえあれば、比は割り算で出ます
ここまでは電流で見てきましたが、電圧でも同じです。抵抗の消費電力は \( p = \dfrac{v^{2}}{R} \) とも書けるので、電圧の実効値も二乗して平均して平方根、という手順は変わりません。
正弦波 \( v = V_{\mathrm{m}}\sin \omega t \ \mathrm{[V]} \) について、押さえておく値は3つです。
\[
\begin{aligned}
最大値 &= V_{\mathrm{m}} \\
実効値 &= \frac{V_{\mathrm{m}}}{\sqrt{2}} ≒ 0.707 V_{\mathrm{m}} \\
平均値 &= \frac{2}{\pi}V_{\mathrm{m}} ≒ 0.637 V_{\mathrm{m}}
\end{aligned}
\]
このうち実効値は、先ほどの定義からその場で作れます。
定義式に \( v = V_{\mathrm{m}}\sin \omega t \) をそのまま入れると、次のようになります。
\[
\begin{aligned}
V &= \sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T} \left( V_{\mathrm{m}}\sin \omega t \right)^{2} \mathrm{d}t} \\
&= V_{\mathrm{m}}\sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T} \sin^{2}\omega t \mathrm{d}t}
\end{aligned}
\]
\( V_{\mathrm{m}} \) は定数なので根号の外へ出せますが、中には \( \sin^{2}\omega t \) が二乗のまま残ります。この二乗を外すために半角の式を使います。
二乗した \( \sin^{2}\omega t \) を半角の式に当てはめると、次のように二乗の無い三角関数に置き換えられます。
\[
\begin{aligned}
\sin^{2}\omega t &= \frac{1 – \cos 2\omega t}{2}
\end{aligned}
\]
\( \cos \) の1周期の平均はゼロなので、残るのは \( \dfrac{1}{2} \) だけです。これを \( T \) で積分すると \( \dfrac{T}{2} \) となり \( \dfrac{1}{T} \) と相殺されるので、あとは平方根をとって \( V_{\mathrm{m}}\sqrt{\dfrac{1}{2}} = \dfrac{V_{\mathrm{m}}}{\sqrt{2}} \) となります。先ほどの図で平均線がちょうど真ん中にあったのはこの \( \dfrac{1}{2} \) のことです。
残る平均値の \( \dfrac{2}{\pi} \) は積分が要ります。導出はできますが、試験中に組み立て直す種類のものではありません。ここは \( \dfrac{2}{\pi} V_{\mathrm{m}} \) の形で覚えてしまうほうが速いです。
3つの値がそろえば、波形率と波高率はその割り算です。
\[
\begin{aligned}
波形率 &= \frac{実効値}{平均値} = \frac{\dfrac{V_{\mathrm{m}}}{\sqrt{2}}}{\dfrac{2}{\pi}V_{\mathrm{m}}} = \frac{\pi}{2\sqrt{2}} ≒ 1.11 \\
波高率 &= \frac{最大値}{実効値} = \frac{V_{\mathrm{m}}}{\dfrac{V_{\mathrm{m}}}{\sqrt{2}}} = \sqrt{2} ≒ 1.41
\end{aligned}
\]
\( 1.11 \) も \( \sqrt{2} \) も、覚えるのではなく3つの値を割って出せば済みます。
分子と分母がひっくり返らない見分け方
- どちらの比も、どんな波形でも必ず \( 1 \) 以上になる(正弦波では \( 1.11 \)・\( 1.41 \))
- したがって、大きいほうを分子に置けばよい。最大値 \( \geqq \) 実効値 \( \geqq \) 平均値 の順に並ぶ
- 波形率は隣り合う「実効値と平均値」、波高率は両端の「最大値と実効値」の比になる
- 比が \( 1 \) ちょうどになるのは、次の節で見る方形波のように大きさが一定の波形のときだけ
方形波で考えれば、数値を覚えていなくても大小が決まります
波形率と波高率は、波形によって値が変わります。ここで丸暗記の表を作りにいくと、覚える量が一気に増えてしまいます。
比べる相手として使えるのが方形波です。方形波は大きさが常に \( V_{\mathrm{m}} \) で、符号だけが入れ替わる波形になります。
二乗すれば常に \( {V_{\mathrm{m}}}^{2} \) なので、その平均も \( {V_{\mathrm{m}}}^{2} \) です。平方根をとって実効値は \( V_{\mathrm{m}} \) となります。絶対値も常に \( V_{\mathrm{m}} \) ですから、平均値も \( V_{\mathrm{m}} \) です。
\[
\begin{aligned}
最大値 = 実効値 = 平均値 &= V_{\mathrm{m}} \\
波形率 = 波高率 &= 1
\end{aligned}
\]
方形波はどちらの比も \( 1 \) になり、これが下限となります。積分は一度も使っていません。
三角波は逆にとがった波形です。大きい値にいる時間が短いぶん、実効値も平均値も最大値からぐっと下がります。したがってどちらの比も正弦波より大きくなります。
実際の値は実効値が \( \dfrac{V_{\mathrm{m}}}{\sqrt{3}} \)、平均値が \( \dfrac{V_{\mathrm{m}}}{2} \) で、波形率は \( \dfrac{2}{\sqrt{3}} ≒ 1.15 \)、波高率は \( \sqrt{3} ≒ 1.73 \) となります。ただしこの2つは積分を使わないと出てこないため、電験3種で覚えておく必要はありません。
実際の出題で確かめる
ここまでの内容が出題でそのまま効くことを、電験3種の過去問2つで確認します。
令和4年度下期 理論 問8(波形率・波高率)
波形率と波高率の定義を空欄にしたうえで、三角波・方形波それぞれで値が大きくなるか小さくなるかを問う出題です。空欄は6か所ありますが、覚えている必要があるのは定義の2か所だけになります。
波形率の分母は平均値、波高率の分子は最大値です。残る4か所は、前の節の方形波だけで決められます。方形波は波形率も波高率も \( 1 \) で、正弦波の \( 1.11 \)・\( 1.41 \) より小さくなります。
したがって「方形波のように平らであれば小さくなる」「三角波のようにとがっていれば大きくなる」の組合せが選ばれ、正解は(1)となります。同ページのワンポイント解説でも、三角波の実効値は積分を使わなければ覚えるしかないため方形波で考えて正答を導けばよい、と示されています。
令和7年度下期 理論 問14(整流形電圧計)
目盛が正弦波交流に対する実効値になっている整流形(全波整流形)の電圧計で、周期 \( 20 \ \mathrm{ms} \) の繰り返し波形を測る問題です。波形は \( 8 \ \mathrm{V} \) が \( 10 \ \mathrm{ms} \) 続き、そのあと \( 0 \ \mathrm{V} \) が \( 10 \ \mathrm{ms} \) 続く形になります。
ここで押さえるのは計器の中身です。整流形の電圧計が実際に測っているのは平均値となります。正弦波なら平均値を \( 1.11 \) 倍すれば実効値になるので、その換算をあらかじめ目盛に組み込んであるという仕組みです。
つまり、測定波形が正弦波でなくても計器は \( 1.11 \) 倍を続けます。まず平均値を求めて、そこに \( 1.11 \) を掛ければ指示値が出ます。
\[
\begin{aligned}
V_{\mathrm{av}} &= \frac{8 \times 10 + 0 \times 10}{20} = 4 \ \mathrm{[V]} \\
V_{\mathrm{i}} &= 1.11 \times 4 = 4.44 \ \mathrm{[V]}
\end{aligned}
\]
答えは \( 4.44 \ \mathrm{V} \) で、正解は(4)となります。この問題は平成27年度 問14からの再出題で、選択肢の並びまで同じものが使われています。
なお、この波形の実効値そのものを計算すると別の値になります。
\[
\begin{aligned}
V &= \sqrt{\frac{8^{2} \times 10 + 0^{2} \times 10}{20}} = \sqrt{32} ≒ 5.66 \ \mathrm{[V]}
\end{aligned}
\]
この \( 5.66 \ \mathrm{V} \) は選択肢(1)に用意されています。定義どおり実効値を出せた人ほど引っかかる作りになっており、問われているのは実効値ではなく計器の指示値という読み取りが分かれ目です。
整流がどう働いているかが頭に入っていないと、この一言は出てきません。単相・三相の整流回路の考え方はパワーエレクトロニクスの対策 ~自己流編その1~で扱っています。
この論点は科目をまたいで出続けている
実効値は理論科目の1単元にとどまりません。整流形電圧計は電気計測、整流回路は機械科目のパワーエレクトロニクス、そして高調波は電力科目にも出てきます。
高調波を含むひずみ波の電力を求める出題(平成29年度 問9・令和5年度下期 問9・令和6年度上期 問9)でも、最初にすることは各成分の最大値を \( \sqrt{2} \) で割って実効値に直す操作です。第3調波そのものがどこから来るのかは第3調波は三相とも同相で扱っています。
ひとつの定義が科目をまたいで効くのは、電験ではよくある形です。単元を科目ごとに切り分けず横につなげる読み方は、解法の形~延長戦~で書いたとおりとなります。
同じ論点が年度をまたいでどう問われ方を変えているかは、解説付きの過去問をまとめて並べてみると見えてきます。収録範囲などの詳細は商品ページでご確認ください。
まとめ
- ✓ 実効値は「二乗 → 平均 → 平方根」の3手で決まる。抵抗の発熱 \( p=Ri^{2} \) を交流と直流で等しく置くと \( R \) が消えて \( I=\sqrt{\dfrac{1}{T}\displaystyle\int_{0}^{T} i^{2}\mathrm{d}t} \) が残る
- ✓ 平均値は全波整流した波形の平均。実効値は二乗の時点で符号が消えるため絶対値が要らない
- ✓ 正弦波の3つの値は 最大値 \( V_{\mathrm{m}} \)・実効値 \( 0.707V_{\mathrm{m}} \)・平均値 \( 0.637V_{\mathrm{m}} \)。波形率 \( 1.11 \) と波高率 \( \sqrt{2} \) はこの割り算で出るので覚えなくてよい
- ✓ 方形波は最大値・実効値・平均値がすべて等しく、波形率も波高率も \( 1 \) で下限。とがった波形ほど大きくなるので、大小だけなら方形波との比較で決まる(令和4年度下期 問8)
- ✓ 整流形の電圧計が測っているのは平均値で、目盛が \( 1.11 \) 倍してある。令和7年度下期 問14(平成27年度 問14の再出題)の指示値は \( 1.11 \times 4 = 4.44 \ \mathrm{V} \) で、実効値の \( 5.66 \ \mathrm{V} \) は誤答の選択肢
実効値まわりで覚えることは、定義ひとつと正弦波の3つの値だけです。そこから先は、割り算と、方形波との比較で片づきます。数値の表を作って覚え直す必要はありません。
問題を見て手が止まったときは、まず「何を平均しているのか」に戻ってみてください。二乗の平均なのか、絶対値の平均なのかが分かれば、あとは順番どおりに進むだけとなります。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!
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