皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。
三角関数の公式集を開くと、加法定理のあとに「積和の公式」「和積の公式」がずらりと並んでいて、それだけで戦意を喪失した経験はないでしょうか。私は公式を覚えるのが苦手なので、電験の受験時代からこれらを丸暗記したことは一度もありません。本記事では、覚える公式を加法定理だけに絞り、積和・和積はその場で作り出すという私のやり方を、導出の手順まで含めて整理します【PR】。
📌 この記事でわかること
- ✓ 積和・和積の公式を丸暗記しなくてよい理由
- ✓ 加法定理から積和・和積を作り出す3ステップ
- ✓ その導出が電験の「有効電力」計算でどう効くか
覚える公式は「加法定理」だけでいい
積和の公式は4本、和積の公式も4本あります。符号や係数がよく似ていて、正確に覚え分けるのは大変です。試験の緊張下で「ここはプラスだったか、マイナスだったか」と迷った経験のある方も多いはずです。
ですが、これらはすべて加法定理から数行で導けます。覚えるのは加法定理の4本だけにして、積和も和積もその場で作り出すほうが、暗記量も間違いも減ります。公式を減らすという考え方は、電験の学習全体で効いてくる省エネ戦略です。
今回のゴール
- 覚えるのは加法定理の4本だけ(土台)
- 加法定理を足し引きして「積和の公式」を作る
- 積和の文字を置き換えて「和積の公式」を作る
STEP1:土台となる加法定理を書き出す
出発点はこの4本だけです。ここだけは覚えてください。
\begin{align}
\sin(\alpha+\beta)&=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta\\
\sin(\alpha-\beta)&=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta\\
\cos(\alpha+\beta)&=\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta\\
\cos(\alpha-\beta)&=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta\\
\end{align}
符号の並びがあやしくなったら、\(\beta=0\) を代入して \(\sin\alpha\)、\(\cos\alpha\) に戻るかを確認すると検算になります。
STEP2:積和の公式は「加法定理を足し引き」して作る
STEP1の4本を、上下でそのまま足したり引いたりします。まず \(\sin\) の2本を足すと、右辺の \(\cos\alpha\sin\beta\) が打ち消し合います。
\begin{align}
\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta)&=2\sin\alpha\cos\beta\\
\end{align}
両辺を2で割れば、積 \(\sin\alpha\cos\beta\) が和で表せました。
\begin{align}
\sin\alpha\cos\beta&=\frac{1}{2}\left\{\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta)\right\}\\
\end{align}
同じ要領で、残りの3本も足し引きするだけです。
\begin{align}
\cos\alpha\sin\beta&=\frac{1}{2}\left\{\sin(\alpha+\beta)-\sin(\alpha-\beta)\right\}\\
\cos\alpha\cos\beta&=\frac{1}{2}\left\{\cos(\alpha+\beta)+\cos(\alpha-\beta)\right\}\\
\sin\alpha\sin\beta&=-\frac{1}{2}\left\{\cos(\alpha+\beta)-\cos(\alpha-\beta)\right\}\\
\end{align}
積和の公式は、加法定理を足すか引くかしているだけです。最後の \(\sin\alpha\sin\beta\) だけ頭にマイナスが付くのは、\(\cos\) の加法定理が \(-\sin\alpha\sin\beta\) を含んでいるからで、これも導出すれば自然に出てきます。
STEP3:和積の公式は「積和の文字を置き換えて」作る
和積の公式は、積和の公式で文字を置き換えるだけで作れます。STEP2の和の中身を、次のように置きます。
\begin{align}
A&=\alpha+\beta\\
B&=\alpha-\beta\\
\end{align}
この2式を \(\alpha\)、\(\beta\) について解くと、
\begin{align}
\alpha&=\frac{A+B}{2}\\
\beta&=\frac{A-B}{2}\\
\end{align}
となります。これを \(\sin\alpha\cos\beta\) の積和の式に代入して両辺を2倍すると、和積の公式が現れます。
\begin{align}
\sin A+\sin B&=2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}\\
\end{align}
残りの3本も、対応する積和の式に同じ置き換えをするだけです。
\begin{align}
\sin A-\sin B&=2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}\\
\cos A+\cos B&=2\cos\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}\\
\cos A-\cos B&=-2\sin\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}\\
\end{align}
電験ではどこで使うのか
「三角関数の公式変形」と聞くと数学の話に思えますが、電験では交流の電力計算でそのまま登場します。代表例が有効電力の導出です。
瞬時電圧と瞬時電流を次のように置きます。
\begin{align}
v&=\sqrt{2}\,V\sin\omega t\\
i&=\sqrt{2}\,I\sin(\omega t-\varphi)\\
\end{align}
瞬時電力 \(p\) は両者の積なので、\(\sin\) 同士の積が出てきます。
\begin{align}
p&=vi=2VI\sin\omega t\sin(\omega t-\varphi)\\
\end{align}
ここで STEP2 で作った \(\sin\alpha\sin\beta\) の積和を使い、積を和に直します。\(\alpha=\omega t\)、\(\beta=\omega t-\varphi\) と見ると、和と差はそれぞれ \(\alpha+\beta=2\omega t-\varphi\)、\(\alpha-\beta=\varphi\) です。
\begin{align}
p&=2VI\cdot\left(-\frac{1}{2}\right)\left\{\cos(2\omega t-\varphi)-\cos\varphi\right\}\\
&=VI\cos\varphi-VI\cos(2\omega t-\varphi)\\
\end{align}
第2項は角周波数 \(2\omega\) で振動する成分なので、1周期で平均すると0になります。残った第1項が有効電力です。
\begin{align}
P&=VI\cos\varphi\\
\end{align}
三角関数の積が出てきたら、積和で「和」に直すと時間平均が一瞬で取れる——これが積和の公式の一番おいしい使いどころです。積のままでは平均が取りにくいものが、和にした途端に「振動成分は平均0」と即断できるようになります。
この導出が効く電験の場面
- 交流の有効電力・無効電力を瞬時値から求めるとき
- 三角関数の積を含む積分を、和に直して計算するとき
- 二次試験で公式集が手元にない状態で、うろ覚えの公式を復元したいとき
なお、当然ですが土台の加法定理そのものは覚えておく必要があります。ここを省くことはできません。逆に言えば、加法定理さえ手元にあれば、積和・和積のどちらを問われても紙とペンだけで復元できる、ということです。
まとめ
- ✓ 積和・和積の公式8本は、加法定理4本からその場で作れる
- ✓ 積和は「加法定理を足し引き」、和積は「積和の文字を置き換え」で導ける
- ✓ 交流の有効電力 \(P=VI\cos\varphi\) は、この積和変形で振動成分を落として得られる
- ✓ 覚える公式を減らすほど、ど忘れによる失点も減る
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公式は覚える対象ではなく、必要なときに作り出す道具です。ひとつの土台から枝葉を導く感覚がつかめると、暗記の負担はぐっと軽くなります。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!
※本記事は、電験王の過去問徹底解説シリーズのPRを含みます。導出の考え方をさらに手を動かして身につけたい方は、過去問徹底解説もあわせてご覧ください。






