電験2種

電験2種の需要は減ったのか|外部委託の壁は7,000Vのまま動いていない【電験二種の将来性】

皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。

電験2種を受けるかどうかで迷うとき、最も大きいのは「取ったあとに何が変わるのか」という疑問だと思います。私も2021年に電験2種を取るべきか?取らざるべき?という記事で、メリットとデメリットを並べました。ただ、あの記事には「この先こうなるかもしれない」という見立てがいくつか混ざっています。

あれから5年が経ちました。見立ての当たり外れは、いまなら法令と国の資料で確かめられます。結論から言えば、この5年で緩んだのは発電設備の容量のほうで、需要設備の電圧7,000Vという線は動いていません。

本記事では、当時の見立てを一次資料で1つずつ答え合わせしていきます。年収についても、公的統計で確かめられる部分とそうでない部分を分けて書きます【PR】。

📌 この記事でわかること

  • ✓ 保安管理業務を外部委託できる範囲の現行の線引き(受電電圧7,000V以下・太陽電池発電所は5,000kW未満ほか)
  • ✓ 保安管理業務講習で実務経験が3年に短縮され、条件しだいで2年・1年まで短くなること
  • ✓ 電験3種は5万V未満・2種は17万V未満という監督範囲の違いが、現場と求人で何を分けているか
  • ✓ 有資格者数の推計(1種 約9千人/2種 約3万4千人/3種 約23万人)から見た電験2種の位置
  • ✓ 「電験の種別ごとの年収」が公的統計で確かめられない理由と、代わりに何を見ればよいか

2021年の私は、3つの見立てを書いていました

5年前の記事は、電験2種を取るべきかどうかを棚卸しする内容でした。結論を出すというより、判断材料を並べる書き方をしています。そのなかに、今時点で確かめ直した方がよい見立てが3つ混ざっていました。

2021年に書いた3つの見立て

  1. 二次試験の合格者数が増えており、短期的には受験者に追い風が吹いている
  2. 電験2種を取ると年収が上がる(転職しなくても、社内等級や役職という形で上がりうる)
  3. 外部委託できる容量の上限が緩和されている。電圧の上限も緩和されれば、電験2種が必要な現場は相対的に減っていくかもしれない

特に3番目は、当時の私がいちばん気にしていた点です。電気保安の仕事を外部委託で回せる範囲が広がるほど、選任という形で電験2種が要る場面は減っていくことになります。3番から順に、現行の法令と国の資料で確かめていきます。

答え合わせ① 外部委託の壁は「7,000V」のまま動いていません

自家用電気工作物には、原則として電気主任技術者を選任しなければなりません。ただし一定の範囲に限り、電気管理技術者や電気保安法人に保安管理業務を委託して、選任しないことが認められています。この「一定の範囲」を定めているのが電気事業法施行規則第52条第2項です。

外部委託が認められる自家用電気工作物(施行規則第52条第2項)

  1. 出力5,000kW未満の太陽電池発電所または蓄電所(電圧7,000V以下で連系等をするもの)
  2. 出力2,000kW未満の発電所(水力・火力・風力に限る。電圧7,000V以下で連系等をするもの)
  3. 出力1,000kW未満の発電所(上記以外。電圧7,000V以下で連系等をするもの)
  4. 電圧7,000V以下で受電する需要設備
  5. 電圧600V以下の配電線路
出典:電気事業法施行規則(e-Gov法令検索)第52条第2項。太字は筆者による強調

注目していただきたいのは4番目です。工場やビルのような需要設備で外部委託が使えるのは受電電圧が7,000V以下、つまり高圧受電までとなっています。発電所の側は太陽電池発電所が5,000kW未満まで広がり、蓄電所という区分も加わりました。

緩んだのは発電設備の容量であって、需要設備の電圧の線は5年前と同じ位置にあります。私が2021年に「電圧の上限も動くのではないか」と書いた見立ては、少なくともこの5年については外れたことになります。

ケンタ
ケンタ
特別高圧の現場は、点検で停電を伴うときの影響範囲が桁違いです。委託する側もされる側もリスクの飲み方が難しく、容量の話ほど単純に線を引けないのだろうと感じています。

容量緩和そのものの経緯は、当時の審議会の議論を追った【規制緩和】電気保安業界の大変革に待ったなし?にまとめてあります。あわせて読んでいただくと、この5年で動いた部分と動かなかった部分がはっきりします。

答え合わせ② 入口のハードルは、確かに下がりました

一方で、緩和が実際に進んだ領域もあります。電気管理技術者や保安業務従事者として外部委託を受けるために必要な、実務経験の年数です。

必要な年数は免状の種類ごとに異なります。第2種・第3種であれば保安管理業務講習の修了で3年、さらに保安管理業務訓練まで修了すれば2年に短縮できます。

第1種は講習の対象ではなく、もともと3年ですので、訓練を修了して2年というルートになります。

そのうえで条件の付いた需要設備であれば、講習の修了者は2年、訓練の修了者は1年の実務経験で受託が認められます。これは経済産業省が公開しているQ&Aに、そのとおり書かれています。

つまり電気保安の仕事に就くこと自体は、5年前より確実に入りやすくなっています。ここは電験2種にとっての追い風ではありません。むしろ「電気管理技術者になりたいだけなら2種である必要はない」という以前からの話が、より強まった形です。

この点は電気管理技術者を目指すなら2種でも3種でも変わらないで書いたとおりで、いま読み返しても結論は変わりません。電気保安の座学として電験2種まで求められる場面は多くなく、現場では設備を肌感覚で理解して即座に動けることのほうが効いてきます。そもそも電気主任技術者・電気管理技術者・電気保安法人は別物ですので、区別があいまいなら電気主任技術者と電気管理技術者と電気保安法人の違いから先に整理してみてください。

答え合わせ③ 人が増えたのは、高圧の側です

ここまでで、外部委託の世界は入りやすくなったことが分かりました。では、その外側はどうなっているのでしょうか。ここで効いてくるのが、免状の種類による監督範囲です。

免状の種類 保安の監督ができる範囲 有資格者数(国の推計)
第1種 すべての事業用電気工作物 約9千人
第2種 電圧17万V未満 約3万4千人
第3種 電圧5万V未満(出力5,000kW以上の発電所・蓄電所を除く) 約23万人
監督範囲は電気事業法施行規則第56条、有資格者数は電験1種の保有者数は国の推計で約9千人で扱った経済産業省の資料より

この表を、さきほどの7,000Vと重ねてみてください。7,000Vを超えて受電する需要設備は外部委託の対象外ですので、設置者は主任技術者を選任することになります。そのうち5万V以上の設備になると、電験3種では選任できません。

実務経験の緩和で人が入りやすくなったのは7,000V以下の世界であって、それ以外の範囲の有資格者が増えたわけではありません。電験2種の有資格者は推計で約3万4千人、電験3種のおよそ7分の1です。しかも国の需給見通しは2023年に、足りているから2030年度に不足するへと反転しています。

1番目の見立て(二次試験の合格者数が増えている)も、ここで確かめておきます。第2種の二次試験合格者は、令和5年度474人、令和6年度553人、令和7年度611人と増え続けています。それでも、前述の2030年度の不足見通しは第2種で約1,000人規模とされています。

見通しが反転した経緯と、その根拠になった数字の読み方は電験1種の保有者数は国の推計で約9千人|2種・3種の人数と合格者数の見通しで詳しく扱っています。人手不足でも試験合格者数が急には増えないと考えられる理由も、そちらに書きました。

年収の差は、公的統計では確かめられません

2つ目の見立て「電験2種を取ると年収が上がる」については、正直に書いておきたいことがあります。賃金構造基本統計調査のような公的統計に、電験の種別ごとの年収という区分は存在しません。したがって「2種を取ると何万円上がる」を公的データで示すことはできません。

代わりに参照できるのは、求人票を集計した民間の数字です。求人サイトの集計では電験2種の平均年収が542.8万円、電験3種は月給35.3万円から年収420万円程度とされています。ただしこれは求人票を集計した値であって、同じ人が2種を取った前後の差ではありません。

読み方としては、金額そのものよりも「どの求人に応募できるか」の差として見るほうが実態に近いと思います。選任できる範囲が広ければ応募先の母集団が変わり、結果として上振れの余地が生まれます。転職せずに年収を上げる経路(社内等級や役職)については、2021年の記事で触れたとおりです。

ケンタ
ケンタ
資格手当のように分かりやすく上がる会社もあれば、まったく変わらない会社もあります。相場を調べるより、ご自身の勤務先で電験2種がどう扱われているかを先に確認したほうが早いです。

では、独学で行くのか、予備校を使うのか

ここまでが「取る価値があるのか」の答え合わせです。まとめると、電気保安の入口は広がった一方で、7,000Vの範囲外にある選任の世界は、人数の面でも法令の面でも5年前と変わっていません。電験2種は、その外側に立つための免状ということになります。

そうなると、次の問いは「どう取るか」に移ります。電験2種には一次試験と二次試験があり、とくに二次試験は記述式ですので、独学で進めるか予備校を使うかで戦い方が変わってきます。

次回から数回に分けて、この分かれ目を扱います。まずは私自身が電験1種の二次試験を準備していたときに、予備校を検討した話から始める予定です(10月7日公開予定)。

まとめ

  • ✓ 需要設備で外部委託が使えるのは受電電圧7,000V以下まで。この線は2021年から動いていない(施行規則第52条第2項第4号)
  • ✓ 緩んだのは発電設備の容量の側。太陽電池発電所・蓄電所は5,000kW未満、水力・火力・風力は2,000kW未満まで外部委託できる
  • ✓ 実務経験は第2種・第3種が講習で3年、訓練まで修了して2年(第1種は訓練のみで2年)。条件の付いた需要設備ならさらに1年短くなる
  • ✓ 監督範囲は3種が5万V未満、2種が17万V未満。7,000Vを超える需要設備は選任が必要で、5万V以上は3種では選任できない
  • ✓ 有資格者は2種が約3万4千人=3種の約7分の1。国の需給見通しは2023年に「2030年度に不足」へ反転している
  • ✓ 年収の種別差を示す公的統計は存在しない。求人集計の数字は「応募できる求人の母集団の差」として読む

電験2種を取る意味は、資格手当の金額よりも「どちら側に立つか」で考えるほうが分かりやすいと思います。外部委託で回る高圧の世界は入口が広がり、これからも人が入ってきます。その一方で、7,000Vを超えた先は選任でしか回らず、5万V以上になれば2種以上の免状がなければ務まりません。

5年前に私が心配した「壁が下がるかもしれない」は、いまのところ起きていません。壁が同じ位置にあるうちに、その内側へ移っておく価値は十分にあると考えています。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!

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