電験2種

電験に必要な微積分学とは

電験 微分 積分 微積分 微小区間

皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。

 

電験は数学と切っても切れない関係にあります。

3種から早くも複素数を扱い始め、2種からはついに微積分を扱い始めます。

ケンタ
ケンタ
1種では行列が登場してきますが、それはまたの機会に

電験での微積分の問題は、物理現象を数式で立式して計算してく問題が多く、微小区間の考え方ができていると比較的楽に解けることがあります。

その典型的な例は電験2種理論のガウスの法則であったりしますが、殆どが理論科目に集中しているが故に、電験2種一次試験では理論が鬼門という人が多いかと思います。

 

ブログで書けることには限りがありますが、基礎的な考え方を紹介することで皆さんの理解の一助になれば幸いです。

今回は、以前パワエレで紹介した積分の考え方についての追補版となります。

電験で微積分が登場する単元とは?

電験3種

あまりないですが、強いてあげるのならばレンツの法則です。

\begin{align}
V&=-\large{N}\frac{\mathrm{d}\varPhi}{\mathrm{d}t}\\
\end{align}

という式です。

微分は変化速度を表しますので、「磁束の変化を妨げるように電圧が発生する」という現象から立式することができます。式をそのまま覚えてもいいのですが、コイルに磁石を近づけると電圧が発生するという現象だけをイメージで持っておくと、その場で立式することができるようになります。

「妨げる」がマイナスに対応して、コイルの巻き数の分だけ電圧が増えていきます。

電験2種

ざっと挙げますと、主に以下になります。

「微小区間→積分」と書いてある単元は、微小区間の立式(下の方で説明します)をしてから、それを拡張、つまり積分して計算する単元です。

理論

  1. ガウスの法則(微小区間→積分)
  2. 非柱状抵抗(微小区間→積分)
  3. 過渡現象(微分方程式)
  4. ビオ・サバールの法則(微小区間→積分)
  5. アンペールの周回積分(実際に線路積分をすることは無いですが、微小区間→積分)

電力

  1. 配電路の電力ロス(微小区間→積分)

機械

  1. 制御、ラプラス変換(積分、微分方程式)
  2. 変圧器の温度上昇試験(微分方程式)

エネルギー管理士(おまけ)

エネルギー管理士試験でも微積分が必要になる問題があります。

  1. 運動方程式(微分⇔積分の行き来)
  2. 回転方程式(運動方程式との対応)

上記の( )内の説明も下の方でします。

電験に必要な微積分のエッセンス

最初にも書いているように、電験2種では微小区間の考え方が出来ているかが重要になってきます。この計算をする際に当たり前のように積分や微分の公式が出てきますが、こちらはもう覚えるしかありません。

微分方程式などで出てくる

\begin{align}
\displaystyle \int \frac{\mathrm{d}x}{x}&=\log_\mathrm{e} x+C\\
\end{align}

などです。

微小区間の考え方

以前のパワエレの記事で以下のような説明をしました。

ケンタ
ケンタ
ちなみに積分とは、微小面積\(\sqrt{ 2 }E\sin\theta \times \mathrm{d}\theta\)(\(\mathrm{d}\)は微小の意味)を積分区間にわたって、足していくようなものです。\(\displaystyle \sum \sqrt{ 2 }E\sin\theta \mathrm{d}\theta\)と書いた方がイメージしやすいかもしれません。

概念図を使ってもう少し詳しく説明していきます。

よく見る公式

\begin{align}
\displaystyle \int_{ \alpha }^{ \beta } f(x)\mathrm{d}x&=F(\alpha)-F(\beta)\\
\end{align}

の値はグラフで言うと以下の黄色の面積に相当します。

この公式の中にある\(f(x)\mathrm{d}x\)とは微小面積を表していて、次の図にある細長い長方形に相当します。

この微小面積を積分区間に渡って足していく、つまり\(\displaystyle \int_{ \alpha }^{ \beta }\)していくことになります。

 

この考え方は3次元にも応用することができ、球の体積を求めるときにも使えます。球を輪切りにした断面で説明していきます。

球の中心から\(r\)離れたところにある、微小体積\(\mathrm{d}V\)は表面積\(4\pi r^2\)を使って\(表面積\times \mathrm{d}r\)と表せます。これを\(0\)から球の半径\(a\)まで積分していくと球の体積を求めることができます。「玉ねぎ」みたいな計算をしています。

つまり

\begin{align}
\mathrm{d}V&=4\pi r^2 \mathrm{d}r \\
\displaystyle \int_{ 0 }^{ a } \mathrm{d}V&= \displaystyle \int_{ 0 }^{ a } 4\pi r^2 \mathrm{d}r\\
V&=\frac{4}{3}\pi a^3\\
\end{align}

となります。

 

また、逆に球の体積\(V\)を微分すると表面積を求めることができます。

\begin{align}
\frac{\mathrm{d}V}{\mathrm{d}r}&=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}r} \left(\frac{4}{3}\pi r^3\right)\\
&=4\pi r^2\\
\end{align}

微分⇔積分 の行き来

エネルギー管理士では速度や加速度の問題が頻繁に出題されます。

そこにも微積分の考え方があり、微積分を使うと各公式を覚えなくてすみます。

 

先ず、加速度・速度・距離は時間\(t\)をパラメータとした微分⇔積分の関係にあります。これは単位から見ても感覚的に分かるかと思います。

\begin{align}
a&=\frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t}\\
\end{align}

ですので、単位だけの式で見ると

\begin{align}
\frac{m}{s^2}&=\frac{1}{s}\times \frac{m}{s}\\
\end{align}

となります。

ケンタ
ケンタ
\(\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\)の\(\mathrm{d}\)とは「微小な」という意味ですので無次元となります。定数と同じということですね。

加速度という概念は日常にはありふれていませんね。

そこで、加速度\(a\)(定数)を起点として、\(t\)で積分をしていくと距離の公式を導出することができます。

\(v_0\)と\(x_0\)は積分定数です。
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回転方程式(おまけ)

運動方程式

\begin{align}
m\frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t}&=F\\
\end{align}

を覚えている方は、

  1. 質量\(m\)を慣性モーメント\(J\)に
  2. 速度\(v\)を角速度\(\omega\)に
  3. 力\(F\)をトルク\(T\)

置き換えることで、回転方程式

\begin{align}
J\frac{\mathrm{d}\omega}{\mathrm{d}t}&=T\\
\end{align}

を作ることができます。

 

そもそも回転方程式とは、剛体の回転を表す方程式となります。ですので、運動方程式で使用していたパラメータを回転時のパラメータに置き換えると、うまく回転方程式をか必要があります。

ケンタ
ケンタ
「剛体」の対義語に「質点」があります。質点とは質量のある点のことで、大きさがありません。ですので、質点を扱うときは運動方程式で運動を考えるだけで、回転を考えなくて済みます。対して剛体とは変形することのない大きさ・質量のある物体ということですので、運動と回転の両方を考える必要があります。

回転における力のようなパラメータはトルクに対応します。トルクの単位はN・mで、同じ力でも作用点との距離が遠くなるほど大きくなり、「てこ」を上手に表現した物理量になります。回転のイメージとも合うのではないでしょうか。

また、回転における速度は角速度に相当します。これは違和感が少ないかと思います。

最後に、慣性モーメントについて。重いものが小さな力だと動きにくいように、慣性モーメントが大きいと、回転がしにくくなります。これは公式からもわかります。\(T\)が一定のとき、\(J\)が大きくなると角加速度(公式で言う\(\frac{\mathrm{d}\omega}{\mathrm{d}t}\)です。)が小さくなります。つまり、角速度の加速が悪くなります。

まとめ

高校では数学で微積分を教え、物理では微積分を使わずに現象を説明しています。

対して電験では、現象を微積分で表せるようになっておくと色んな手間が省けます。

 

今回はその一例を紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか。

もう少し噛み砕いた説明ができればよかったのですが、結構限界に近かったです笑

 

それでは次回!

続編書きました!
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POSTED COMMENT

  1. レベル4 より:

    電験3種の追い込みで忙しいにも関わらず何回か読んでしまいました(笑)
    図など多用されており非常に分かりやすかったです
    やはり積分や微分の公式は覚える必要があるのですね
    ケンタさんのような、1種をお持ちでそれとは別に数学のバックボーンもある
    方の解説だと、やはりすごく説得力を感じます
    私にはまだ少し早いかもしれませんが(笑)
    クオリティの高い記事を読めて良かったです!

    • ケンタ より:

      >レベル4さん
      コメントありがとうございます。

      そういっていただけるとモチベーションが上がります!!
      2種を受ける際は参考にしてみてください。

      でも先ずは3種頑張って下さい!

  2. マントスレオーク より:

    微分積分できても実務では役に立たんで

    • ケンタ より:

      >マントスレオークさん
      確かに役に立ちませんね。
      ただ、できるようにしておかないと合格が難しくなって、でかい施設に選任されること自体なくなりますからね。。。

  3. はる より:

    なんども読み直しました。
    微積を勉強中なのでとても参考になります。
    1種2次が地獄というフレーズ、とても興味深いですw
    どれだけ地獄だったかまた、教えてください。

    • ケンタ より:

      >はるさん
      コメントありがとうございます!

      計算地獄の一言に尽きます笑
      詳しくは後編で。

  4. 田舎ビルメン より:

    まだ、二種の勉強・・・・正確に書くとそのための数学の勉強すらしていないのに
    なんか頑張れば受かるような気がしてきました。
    でも、数学ができない私だからこそ三種の時にそれ用の数学を勉強しなおした上で
    四科目のうち理論に50%~60%傾けてきた良かったと思えるケンタさんの解説でした。

    >高校では数学で微積分を教え、物理では微積分を使わずに現象を説明しています。
    私が高校の時に物理が得意だった理由が正にそれだったのです。
    ケンタさん、やっぱり電気の専門学校の先生やるのはどうですか、って思ってしまった
    説明です。ありがとうございました。爺さんなりに頑張ります。

    • ケンタ より:

      >田舎ビルメンさん
      コメントありがとうございます!

      微積分が苦手ということで、最悪理論の微積分だけ捨てるというのもありかと思います。

      最低限、過渡現象とラプラス変換だけ抑えておけば何とかなるかもしれません。後者はs変換の積分公式が出るくらいで、ラプラス変換自体は積分を全くしないですし。

      先生は前職の塾講師でお腹いっぱいです笑
      でもありがとうございます!

  5. 田舎ビルメン より:

    >高校では数学で微積分を教え、物理では微積分を使わずに現象を説明しています。
    物凄く納得しました。私は高校時代に物理を習っていましたが、得意でした。
    が、数学は赤点スレスレでした。そして高校の数学教師で物理が嫌い、という人も一定数いるようです。

    >対して電験では、現象を微積分で表せるようになっておくと色んな手間が省けます。
    これまた凄く納得しました。三種の時に数学から始め、理論に全体の50~60%を費やしていたのですが、おかげで公式を左程覚えていなくても問題を解けました。
    私個人が「力業」と呼んでいる問題の解き方も出来るようになりました(「電験3種 理論 平成28年 問15のお話」は正しく納得)

    なんかまだ、二種のためにするはずの数学の勉強すらしていないのにケンタさんのここでの解説を読むと頑張れば二種でも受かるようになるんじゃないか、と無謀にも感じてきました。

    やっぱりケンタさんには電気の専門学校の先生になってほしいなぁ。
    長文すいませんでした。

    • ケンタ より:

      >田舎ビルメンさん
      またまたコメントありがとうございます!

      物理が苦手な数学教師がいることに驚きです笑
      力学や電磁気学に関して言えば、大学だと微積分やベクトル、行列を駆使して説明していることもあり相性は良さそうなのですが。

      私が言うのも変ですが、力業で答えに辿り着けるまでになっているならば、田舎ビルメンさんの理論に関する理解度と数学の慣れ度は高いような気がします。
      微積分は難解でしょうが頑張って下さい!

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