過渡現象

過渡現象における簡易式を導出してみた

皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。

 

半年程前に電験2種 過渡現象をラプラス変換で解く24年間 平成30年度版の販売を告知させていただきました。それにあたっていただいたコメントに

ラプラス変換を使わずとも簡易式というのがあります。

というのがありました。

それを受けて今回、その簡易式を別解としてラプラス変換本のボリュームアップを実行しました!

ラプラス変換本が第2版になって再発売しました!皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。 半年程前に電験2種 過渡現象をラプラス変換で解く24年間 ...

過渡現象における簡易式とは

電流i(t)、電圧v(t)、電荷q(t)それぞれについて、

i(t)=i()+{i(0)i()}etτv(t)=v()+{v(0)v()}etτq(t)=q()+{q(0)q()}etτ

初期値i(0)など)と定常値i()など)、時定数τに数値や文字を代入すれば、確かにラプラス変換をせずに簡単に求まります。

 

この簡易式は結果的には正しいのですが、これだけ提示されて正しいと言われても、狐につままれた感が拭えないと思いますので、導出をしてみます。

導出方法

導出する前に、この簡易式はRL回路RC回路に限る話となります。

RLC回路には適用できません。

2つの回路について、知りたい地点の電流i(t)、電圧v(t)、電荷q(t)を求めることができます。

RL回路

電流i(t)の導出

回路全体について微分方程式を立てると

Ri(t)+Ldi(t)dt=E

となります。この形の微分方程式は、過渡解と定常解に分けて求めて、重ね合わせて一般解を求めます。

 

過渡解は、積分定数Cと定数Aを用いて以下のように求まります。

Ri(t)+Ldi(t)dt=0Ldi(t)dt=Ri(t)di(t)i(t)=RLdtln i(t)=RLt+Ci(t)=eRLt+C=AeRLt

 

定常解ERで表記することも可能ですが、簡易式の完成形を見越してi()の表記のままとします。

 

以上より、一般解

i(t)=AeRLt+i()

となります。一般解の初期値をi(0)とすると、

i(0)=Ae0+i()A=i(0)i()

となります。

したがって、LRを時定数τに置き換えると、

i(t)=i()+{i(0)i()}etτ

が求まります。

電圧v(t)の導出

vR(t):抵抗の電圧
vL(t):コイルの電圧
日本語による説明は割愛します。

vR(t)=i(t)R=i()R+{i(0)Ri()R}etτ=vR()+{vR(0)vR()}etτvL(t)=EvR={EvR()}{vR(0)vR()}etτ=vL()+{vR(0)+vR()}etτ=vL()+{EvR(0)E+vR()}etτ=vL()+[{EvR(0)}{EvR()}]etτ=vL()+{vL(0)vL()}etτ

RC回路

電流i(t)の導出

回路全体について電圧降下の式を立てると

Ri(t)+vC(t)=E (1)

となります。

一方で、コンデンサにおける電荷q(t)は定義より

0ti(t)dtq(t)=CvC(t)

つまり、両辺を微分して

i(t)CdvC(t)dtdvC(t)dt=i(t)C 

となります。これを式(1)の両辺を微分した式に代入して

Rdi(t)dt+i(t)C=0di(t)i(t)=dtCRln i(t)=tCR+Ci(t)=etCR+C=AetCR

t=0のとき

i(0)=Ae0A=i(0)

また、t0のとき

i()=A×0=0

 

以上より、CRを時定数τに置き換えたうえで、簡易式に揃えるようにi(t)を式変形をしていくと

i(t)=i(0)etτ=0+i(0)0etτ=i()+{i(0)i()}etτ

が求まります。

電圧v(t)の導出

vR(t):抵抗の電圧
vC(t):コンデンサの電圧
RL回路のときと全く同じ導出です。

vR(t)=i(t)R=i()R+{i(0)Ri()R}etτ=vR()+vR(0)vR()etτvC(t)=EvR={EvR()}{vR(0)vR()}etτ=vC()+{vR(0)+vR()}etτ=vC()+{EvR(0)E+vR()}etτ=vC()+[{EvR(0)}{EvR()}]etτ=vC()+{vC(0)vC()}etτ

電荷q(t)の導出

q(t)=CvC(t)=CvC()+{CvC(0)CvC()}etτ=q()+{q(0)q()}etτ

感覚的な導出

簡易式があるのは覚えているけどその導出の仕方を忘れてしまったときは、感覚的な導出で乗り切る方法もあります。

これから紹介する方法は数学的には全く厳密ではないです笑

まず、電流であろうと電圧であろうと電荷であろうと、式の形は全部同じということだけは飲み込みます。

i(t)=i()+{i(0)i()}etτv(t)=v()+{v(0)v()}etτq(t)=q()+{q(0)q()}etτ

次に、単純な減衰関数を余白に書きます。

このグラフからi(t)の簡易式を作っていきます。

このようにベース部分と減衰部分に切り分けます。

 

ベース部分はi()です。

 

減衰部分は自然対数の底eで減衰していくとします。

指数関数的な挙動をする自然現象自然対数の底eで表せることが多いので。以前も似たような説明をしています。
電験2種 一次試験 理論 過渡現象
感覚で解く過渡現象皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。 試験を受験された方はお疲れ様でした。 さて、本日のテーマ...

ということで、初期量i(0)i()が減衰していきますので、

{i(0)i()}etτ

と表せます。

 

以上、2つを合わせると

i(t)=i()+{i(0)i()}etτ

となります。

ということで、v(t)q(t)同じ形の

v(t)=v()+{v(0)v()}etτq(t)=q()+{q(0)q()}etτ

となります。

実際の使用例

実際に簡単な回路を使って、例題を解いてみましょう。なお、電流・電圧・電荷全てを書くのは面倒ですので笑、電流だけを求めてみます。

RL回路

コイルの特性から

i(0)=0,i()=ER

となりますので、簡易式に代入して

i(t)=i()+{i(0)i()}etτ=ER+{0ER}eRLt=ER(1eRLt)

となります。

RC回路

コンデンサの特性から

i(0)=ER,i()=0

となりますので、簡易式に代入して

i(t)=i()+{i(0)i()}etτ=0+{ER0}etCR=ERetCR

となります。

まとめ

このように、本来であれば微分方程式を立てて解くところ、簡易式を使えば一気に最後までショートカットできるようになります。

私としては電験1種で必須となってくるラプラス変換の解法も捨てがたいのですが、事実として簡易式の方も確かに楽ですので、ご紹介しました。

過渡現象をラプラス変換で解くのは電験1種レベルだった件について皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。 そして、新年あけましておめでとうございます。 年末年始も...

 

お好きな方を!それでは次回!

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POSTED COMMENT

  1. Tom より:

    たびたびすいません。
    簡易式は「i(t)=i(∞)+(i(0)-i(∞))exp(-t/τ)」等ではありませんか。「i(t)=i(∞)+i(0)-i(∞)exp(-t/τ)」という表記だと、「i(t)=i(∞)+i(0)-(i(∞)exp(-t/τ))」という意味になってしまいます。
    最初はそういうものかと思っただけでしたが、貴サイトを何周か見て回っているうちに過渡現象がわかり始めて、気が付きました。

    • ケンタ より:

      >Tomさん
      ご指摘の通りで修正しましす。失礼しました。(数式表示の仕様変更で{ }が非表示になってしまっていました)
      あってはならないことですが、間違いに気付けるほど習熟されてきたということで…

      • Tom より:

        道理で。貴サイトにしては単純ミスで、どこからチェック無しでコピーしてきたかと思ってしまいました。
        しばらくは、貴サイトを含めたラプラスと制御関係のページを回って、学習を進めようかと思っています。

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