電験2種

オペアンプをまとめて覚える方法

スピーカに使われているオペアンプ

皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。

 

オペアンプってありますよね。

電験3種2種ともによく出題される単元ですが、2種レベルになってくると回路の種類が増えてきて、2種類→5種類と2.5倍となります。

 

と言っても、2.5倍となっても公式の導出はワンパターンですので、それを覚えてしまえば回路図を見てからの判断ができますし、特殊な回路図のオペアンプの問題でも、基本的にはこの記事の導出ができるようになれば自然と解けるようになります。

どこかで聞いた話ですね笑 そうです、チョッパー回路でも似たような話をしました。

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ということで今回はオペアンプの公式導出の話です。

ケンタ
ケンタ
この話しぶりから分かるように、私は毎回公式を導出して対処しています。特に積分器微分器についてはコンデンサの位置で名称と積分 or 微分が変わるので、導出を覚えるしかありません。

オペアンプとは?

opeampという英単語があるわけではなく、造語です。

省略せずに書くとOPErational AMPlifierとなり、日本語では演算増幅器と訳されます。

このoperational(演算)と言うところに、オペアンプの基本的な動作が集約されているような気がします。

基本的な動作

オペアンプの典型的な回路図に基づいて説明してきます。

オペアンプの基本的な動作は、+と-の入力電位の差が無くなるように\(v_{\mathrm{out}}\)の電位を調整することです。

+と-の入力電位の差が無くなった状態をイマジナリショート(仮想短絡)と呼びます。

+と-間には大きさ無限大の入力インピーダンスがあるので、+と-の入力電位の差が無くなっても↓のような電流の流れが発生せず、

分岐しない一筆書きの電流の流れとなります。

先ず、\(v_{\mathrm{in}}\)から電位0であるー端子に向かって電流が流れていき、それに応じて\(R_2\)へ電流が流れていきます。
出力インピーダンスが0なので、オペアンプの先に電流が吸い込まれる形になります。

反転増幅器

前出の図について説明を続けます。

\(R_1\)の右端はイマジナリショートを介して大地に電流が流れずとも接地をしているので、その電位は0とみなすことができます。よって、\(R_1\)を流れる電流\(i\)は

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=R_1i\\
i&=\frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}\\
\end{align}

となります。これを使って\(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てると、

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=(R_1+R_2)i+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{in}}&=(R_1+R_2)\times \frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{in}}&=v_{\mathrm{in}}+\frac{R_2}{R_1}v_{\mathrm{in}}+v_{\mathrm{out}}\\
\frac{v_{\mathrm{out}}}{v_{\mathrm{in}}}&=-\frac{R_2}{R_1}\\
\end{align}

となります。

出力比\(v_{\mathrm{out}}/v_{\mathrm{in}}\)がマイナスとなるので、この増幅器は反転増幅器となります。\(v_{\mathrm{in}}\)に対して、\(v_{\mathrm{out}}\)は反対の電位となって出力されます。

\(v_{\mathrm{in}}\)は交流電源ですので、常に\(v_{\mathrm{in}}\)がの電位で接地電位のイマジナリショートを挟んで\(v_{\mathrm{out}}\)が常にの電位となるわけではありません。イマジナリショートの部分が常に接地電位であることは変わりませんが、時々刻々で正負が変わる\(v_{\mathrm{in}}\)に対して、常に\(v_{\mathrm{out}}\)が反対側(逆位相)にいるということです。
\(R_1>R_2\)という大小関係に\(R_1\)と\(R_2\)を調整すれば、\(\frac{R_2}{R_1}\)の部分を増幅ではなく減衰させる方向にすることもできます。

導出のポイントは主に2つです。

導出のポイント

  1. イマジナリショートから\(i\)を求める。
  2. \(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てる。

以降も、与えられた回路図に対して↑のポイントにしたがって導出をしていきます。

それではどんどん行きましょう!

非反転増幅器

この回路図では+の入力電位が\(v_{\mathrm{in}}\)となるので、-の入力電位がイマジナリショートのためにつられて\(v_{\mathrm{in}}\)となります。

そのため、電流の向きが↓のようになり、オペアンプの先から電流が供給されます。

先ず、ー端子から左端の接地端子に向かって電流が流れていき、それに応じてオペアンプの先から電流が供給されます。

その値\(i\)は

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=R_1i\\
i&=\frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}\\
\end{align}

となります。これを使って\(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てると、

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}+R_2i&=v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{in}}+R_2\times\frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}&=v_{\mathrm{out}}\\
\frac{R_1+R_2}{R_1}v_{\mathrm{in}}&=v_{\mathrm{out}}\\
\frac{v_{\mathrm{out}}}{v_{\mathrm{in}}}&=\frac{R_1+R_2}{R_1}\\
\end{align}

となります。

出力比\(v_{\mathrm{out}}/v_{\mathrm{in}}\)がプラスとなるので、この増幅器は非反転増幅器となります。つまり、\(v_{\mathrm{in}}\)と\(v_{\mathrm{out}}\)は常に同じ符号の電位となって出力されます。

差動増幅器

この回路図では+の入力電位が\(v_2\)を按分した値\(\frac{R_2}{R_1+R_2}v_2\)となるので、-の入力電位がイマジナリショートのためにつられて同じ値となります。

\(R_1\)にかかる電圧が+側の\(v_2\)でないことに注意して下さい。+端子の対地電圧は\(R_2\)にかかる電圧と等しいです。

そのため、\(R_1\)を流れる電流\(i\)は

\begin{align}
v_{1}-\frac{R_2}{R_1+R_2}v_2&=R_1i\\
i&=\frac{v_{1}}{R_1}-\frac{R_2}{R_1(R_1+R_2)}v_2\\
\end{align}

となります。これを使って\(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てると、

\begin{align}
v_1&=(R_1+R_2)i+v_{\mathrm{out}}\\
v_1&=\frac{R_1+R_2}{R_1}v_1-\frac{R_2}{R_1}v_2+v_{\mathrm{out}}\\
-\frac{R_2}{R_1}v_1+\frac{R_2}{R_1}v_2&=v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{out}}&=-\frac{R_2}{R_1}(v_1-v_2)\\
\end{align}

となります。2つの電圧源を使って入力電位を作るので、差動増幅器と呼ばれます。

積分器

ここからはコンデンサが登場してきて、少し難易度が上がってきます。

交流電源回路におけるコンデンサを含む電圧降下の式では、\(\mathrm{j}\omega\)が使用されますが、増幅器に限っては直流回路的に微積分を使って表します。コンデンサを使った微積分の表現は、中々慣れていない方が多いと思いますので、丁寧に解説していきます。

先ず、反転増幅器と同じように電流\(i\)を導出します。

\begin{align}
i&=\frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}\\
\end{align}

です。次に電圧降下の式を立てます。

コンデンサの電圧を\(v_\mathrm{C}\)とすると、

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=R_1i+v_\mathrm{C}+v_{\mathrm{out}}\\
\end{align}

となります。

 

ここで、\(v_\mathrm{C}\)を\(i\)を使った式に変換していきます。

コンデンサ関係の公式で\(v\)が登場してくるものと言えば、

\begin{align}
Q&=CV\\
\end{align}

ですので、

\begin{align}
v_\mathrm{C}&=\frac{Q}{C}\\
\end{align}

となります。次に、電荷\(Q\)と電流\(i\)の関係式は

\begin{align}
Q&=\displaystyle \int i\mathrm{d}t\\
\end{align}

ですので、

\begin{align}
v_\mathrm{C}&=\frac{1}{C}\displaystyle \int i\mathrm{d}t\\
\end{align}

となります。

直流電源とコンデンサの過渡現象では、充電放電かで積分の手前がプラスとなるかマイナスとなるかの判断をします。充電なら時間を経る毎に電荷が増加していくので、プラスとなります。今回は交流電源ですので、\(i\)の位相によってプラスとマイナスのどちらも表現したことになります。

以上のことから、電圧降下の式は以下となります。

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=R_\mathrm{1i}+v_\mathrm{C}+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{in}}&=R_1\times\frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}+\frac{1}{C}\displaystyle \int \frac{v_{\mathrm{in}}}{R_1}i\mathrm{d}t+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{out}}&=-\frac{1}{R_1C}\displaystyle \int v_{\mathrm{in}}i\mathrm{d}t\\
\end{align}

上式に積分記号\(\displaystyle \int\)が登場してくるので、この回路は積分器と呼ばれます。

微分器

今度はコンデンサの位置が違う場合です。

この場合でも先ず、イマジナリショートについて記述します。コンデンサの両端の電位差は\(v_1-0=v_1\)ですので、

\begin{align}
Q&=Cv_{\mathrm{in}}\\
\displaystyle \int i\mathrm{d}t&=Cv_{\mathrm{in}}\\
\end{align}

となります。イマジナリショートの条件からは\(i\)の式を作る、というのがこれまでの流れでしたので、今回も両辺を\(t\)で微分して\(i\)の式を作ります。

\begin{align}
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}(\displaystyle \int i\mathrm{d}t)&=\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}(Cv_{\mathrm{in}})\\
i&=C\frac{\mathrm{d}v_{\mathrm{in}}}{\mathrm{d}t}\\
\end{align}

となります。

左辺は微分積分がキャンセルして\(i\)だけが残ります。

次に、\(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てると、

\begin{align}
v_{\mathrm{in}}&=v_{\mathrm{C}}+R_1i+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{in}}&=v_{\mathrm{in}}+R_1i+v_{\mathrm{out}}\\
v_{\mathrm{out}}&=-R_1i\\
&=-R_1 C\frac{\mathrm{d}v_{\mathrm{in}}}{\mathrm{d}t}\\
\end{align}

となります。上式に微分が登場してくるので、この回路は微分器と呼ばれます。

 まとめ

 いかがでしたでしょうか。

種類の多いオペアンプでも、以下の2つのことを意識すれば網羅的に導出できることを実感できたのではないでしょうか。(重要なポイントですので、もう1度載せておきます。)

導出のポイント

  1. イマジナリショートから\(i\)を求める。
  2. \(i\)の経路にわたって電圧降下の式を立てる。

このポイントさえ押さえてしまえば、与えられたオペアンプがどの種類なのか式から答えることができるようになります!オペアンプの問題演習では+と-の入力電位部分が複雑な形をしていたりしますが、基本的な流れは同じですので、是非挑戦してみて下さい。

それでは次回!

POSTED COMMENT

  1. 匿名 より:

    非常にわかりやすく解説されていて、大変勉強になりました。
    一つ気になったところがあるのですが、積分器の箇所に誤植(iが1つ多い)があると思うのですが、いかがでしょうか。
    お手すきの際に、ご確認ください。

    オペアンプを調べて、貴サイトに最初に出会えてよかったです。
    ありがとうございました。

    • ケンタ より:

      >匿名さん
      調べもののお役に立てたようで何よりです。

      また、ご指摘ありがとうございました。
      修正しました!

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