皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。
変圧器の効率を扱う問題では、「鉄損は負荷に関係なく一定」「銅損は負荷電流の2乗に比例」という2つの前提が当たり前のように出てきます。ここを暗記のまま進むと、最大効率の条件がなぜ鉄損=銅損になるのかがつながらず、全日効率や無負荷試験・短絡試験の問題でも手が止まります。本記事では、この2つの前提がどこから来るのかを式で押さえ、最大効率の条件まで一本の流れで整理します【PR】。
📌 この記事でわかること
- ✓ 鉄損が負荷電流に関係なく一定になる理由(磁束密度が電圧と周波数で決まるため)
- ✓ 銅損が負荷電流(容量)の2乗に比例する理由と、負荷率での書き換え方
- ✓ 最大効率の条件が「鉄損=銅損」になる仕組みと、全負荷とは限らない理由
結論:損失を決めている量が違う
先に結論だけ示します。鉄損と銅損は、そもそも何によって決まる損失なのかが違います。
2つの損失を決めている量
- 鉄損(無負荷損)… 鉄心の中の磁束密度と周波数で決まる。電源電圧と周波数が一定なら負荷が変わっても変わらない
- 銅損(負荷損)… 巻線に流れる電流で決まる。ジュール熱 \( I^{2}r \) そのものなので電流の2乗に比例する
鉄損は電圧側の事情、銅損は電流側の事情で決まる損失です。この住み分けが分かると、後に出てくる話がほとんど自動的につながります。
鉄損が負荷に関係なく一定になる理由
一次巻線に電圧 \( V_{1} \) を加えたとき、巻数 \( N_{1} \)・周波数 \( f \)・鉄心の最大磁束 \( \varPhi_{\mathrm{m}} \) のあいだには、誘導起電力の式から次の関係が成り立ちます。
\( V_{1} \fallingdotseq 4.44fN_{1}\varPhi_{\mathrm{m}} \)
この式を \( \varPhi_{\mathrm{m}} \) について解くと、鉄心を通る磁束は電源側の条件だけで決まっていることが読み取れます。
\( \varPhi_{\mathrm{m}} \fallingdotseq \dfrac{V_{1}}{4.44fN_{1}} \)
鉄心の断面積 \( A \) が一定なら、磁束密度 \( B_{\mathrm{m}}=\varPhi_{\mathrm{m}}/A \) も電源電圧と周波数だけで決まります。この式のどこにも負荷電流は現れません。二次側に負荷をつなぐと一次電流は増えますが、増えた分は二次側の起磁力を打ち消すために流れる成分であり、鉄心を通る磁束そのものはほとんど変わらないためです。
そのうえで、鉄損の中身を見ます。
鉄損の2成分と、それを決める量
- ヒステリシス損 … \( P_{\mathrm{h}} \propto fB_{\mathrm{m}}^{\,1.6\text{〜}2} \)。鉄心の磁化が向きを変えるたびに生じる損失
- 渦電流損 … \( P_{\mathrm{e}} \propto f^{2}B_{\mathrm{m}}^{\,2}t^{2} \)(\( t \) : 鋼板の厚さ)。鉄心内部に誘導される渦電流によるジュール熱
どちらの式にも \( f \) と \( B_{\mathrm{m}} \) しか入っていません。そして \( B_{\mathrm{m}} \) は先ほど見たとおり電源電圧と周波数で決まる量です。つまり電源が一定なら鉄損は負荷に関係なく一定という結論になります。鉄損が「無負荷損」と呼ばれるのも、無負荷のときからすでに発生しているからです。
銅損が電流の2乗に比例する理由
銅損は、巻線の抵抗 \( r \) に電流 \( I \) が流れることで生じるジュール熱です。
\( P=I^{2}r \)
式そのものが \( I^{2} \) の形をしているので、比例の次数を考える必要はありません。抵抗 \( r \) は巻線の材質と長さ・断面積で決まる値で、負荷が変わっても変化しないためです。
問題文では電流ではなく「負荷率」や「容量」で与えられることが多いので、そこも押さえておきます。定格電圧で運転しているなら負荷容量は \( S=VI \) で電流に比例するため、負荷容量が2倍なら電流も2倍、銅損は4倍になります。定格電流を \( I_{\mathrm{n}} \)、全負荷銅損を \( P_{\mathrm{c}} \)、負荷率を \( \alpha \)(全負荷が \( \alpha=1 \))とすると、負荷率 \( \alpha \) のときの銅損は次のように書けます。
\( (\alpha I_{\mathrm{n}})^{2}r=\alpha^{2}I_{\mathrm{n}}^{2}r=\alpha^{2}P_{\mathrm{c}} \)
半分の負荷なら銅損は4分の1になります。一方で鉄損はそのままなので、軽負荷になるほど損失全体に占める鉄損の割合が大きくなります。
無負荷試験と短絡試験がきれいに分かれる理由
鉄損と銅損を決めている量が違うことは、2つの試験の意味づけにも直結します。
- 無負荷試験:二次側を開放し、一次に定格電圧を加える。磁束密度は定格どおりなので鉄損は定格値どおり発生する一方、流れるのは励磁電流だけで小さいため銅損はほぼ無視できる。よって測った電力がほぼ鉄損になる
- 短絡試験:二次側を短絡し、定格電流が流れるところまで一次電圧を上げる。必要な電圧(インピーダンス電圧)は定格電圧の数%〜十数%で済むため磁束密度が小さく鉄損はほぼ無視でき、測った電力がほぼ銅損(インピーダンスワット)になる
どちらの試験も「一方の損失だけを大きくして、もう一方を無視できる状態にする」という同じ発想でできています。試験名と測定量の対応を丸暗記しなくても、電圧を掛けるのか電流を流すのかを思い出せば毎回組み立て直せます。
最大効率が「鉄損=銅損」になる仕組み
ここまでの2つの性質を効率の式に入れると、最大効率の条件が導けます。定格容量 \( S_{\mathrm{n}} \)、負荷力率 \( \cos\varphi \)、負荷率 \( \alpha \) のとき、効率は次のようになります。
\( \eta=\dfrac{\alpha S_{\mathrm{n}}\cos\varphi}{\alpha S_{\mathrm{n}}\cos\varphi+P_{\mathrm{i}}+\alpha^{2}P_{\mathrm{c}}} \)
ここで \( P_{\mathrm{i}} \) が鉄損、\( P_{\mathrm{c}} \) が全負荷銅損です。分子・分母を \( \alpha S_{\mathrm{n}}\cos\varphi \) で割ります。
\( \eta=\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{S_{\mathrm{n}}\cos\varphi}\left(\dfrac{P_{\mathrm{i}}}{\alpha}+\alpha P_{\mathrm{c}}\right)} \)
効率を最大にしたいので、括弧の中の \( \dfrac{P_{\mathrm{i}}}{\alpha}+\alpha P_{\mathrm{c}} \) を最小にすればよいことになります。2つの項の積は \( \dfrac{P_{\mathrm{i}}}{\alpha}\cdot\alpha P_{\mathrm{c}}=P_{\mathrm{i}}P_{\mathrm{c}} \) と \( \alpha \) が消えて定数になるため、相加相乗平均がそのまま使えます。
\( \begin{aligned} \dfrac{P_{\mathrm{i}}}{\alpha}+\alpha P_{\mathrm{c}} &\geqq 2\sqrt{P_{\mathrm{i}}P_{\mathrm{c}}} \\ \therefore\ \eta &\leqq \dfrac{1}{1+\dfrac{2\sqrt{P_{\mathrm{i}}P_{\mathrm{c}}}}{S_{\mathrm{n}}\cos\varphi}} \end{aligned} \)
等号が成り立つのは \( \dfrac{P_{\mathrm{i}}}{\alpha}=\alpha P_{\mathrm{c}} \) のとき、つまり \( \alpha^{2}P_{\mathrm{c}}=P_{\mathrm{i}} \) のときです。左辺は負荷率 \( \alpha \) のときの銅損そのものですから、最大効率の条件は「そのときの銅損が鉄損と等しい」ということになります。このときの負荷率は次のとおりです。
\( \alpha=\sqrt{\dfrac{P_{\mathrm{i}}}{P_{\mathrm{c}}}} \)
微分を使わずに最小値を出すこの手順は、最大電力を相加相乗平均で解くパターンとまったく同じ形です。手順を1つ覚えておけば、理論科目の最大電力にも機械科目の最大効率にも同じように使えます。正攻法として微分で解く場合の位置づけは電験で微分積分はどこで使う?で整理しています。
全負荷で最大効率になるとは限らない
式を数字で追ってみます。鉄損 \( P_{\mathrm{i}}=180\,\mathrm{W} \)、全負荷銅損 \( P_{\mathrm{c}}=500\,\mathrm{W} \) の変圧器(定格容量 \( 10\,\mathrm{kV\cdot A} \)、\( \cos\varphi=1 \))を考えます。最大効率になる負荷率は次のように求まります。
\( \alpha=\sqrt{\dfrac{180}{500}}=\sqrt{0.36}=0.6 \)
負荷率60%と全負荷とで効率を比べると、差がはっきり出ます。
- 負荷率60%:出力 \( 6000\,\mathrm{W} \)、損失 \( 180+0.6^{2}\times500=360\,\mathrm{W} \) → \( \eta=6000/6360 \fallingdotseq 94.3\% \)
- 全負荷:出力 \( 10000\,\mathrm{W} \)、損失 \( 180+500=680\,\mathrm{W} \) → \( \eta=10000/10680 \fallingdotseq 93.6\% \)
出力が小さいほうが効率は高いという、直感に反する結果になります。鉄損が固定費、銅損が変動費のような関係にあるためで、負荷が軽いうちは銅損の減り方が鉄損の重さに勝っているからです。
実際の配電用変圧器は一日の大半を軽い負荷で運転するので、\( P_{\mathrm{i}} \) を \( P_{\mathrm{c}} \) より小さく設計し、\( \alpha<1 \) の領域で最大効率を迎えるように作られます。24時間の電力量で効率を評価する全日効率が使われるのも同じ理由で、鉄損は負荷がなくても24時間発生し続ける一方、銅損は電流が流れている時間しか発生しないためです。
変圧器の性能を表すもう一つの指標である電圧変動率については、近似式・精密式・厳密式の使い分けで整理しています。効率と電圧変動率はどちらも等価回路の同じ要素から出てくる量なので、あわせて押さえておくと機械科目の変圧器分野がひとまとまりになります。
過去問で型を通す
損失の性質そのものは、ここまでの内容で足ります。あとは実際の設問で、与えられた数値をどの記号に当てはめるかを間違えないようにするだけです。全負荷銅損なのか、そのときの負荷での銅損なのかを取り違えると答えが変わります。問題文の「全負荷銅損」「定格時の銅損」という言い回しに敏感になっておくと、失点をかなり防げます。機械科目全体の攻略方針は電験三種 機械の過去問攻略にまとめていますので、単元の優先順位を決めるときにご覧ください。
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まとめ
- ✓ 鉄損は磁束密度と周波数で決まり、その磁束密度は \( V_{1} \fallingdotseq 4.44fN_{1}\varPhi_{\mathrm{m}} \) から電源電圧と周波数だけで決まる。だから負荷に関係なく一定
- ✓ 銅損は \( I^{2}r \) そのもの。負荷率 \( \alpha \) で書けば \( \alpha^{2}P_{\mathrm{c}} \) となり、半分の負荷なら4分の1になる
- ✓ 効率の式を整理すると \( P_{\mathrm{i}}/\alpha+\alpha P_{\mathrm{c}} \) の最小化に帰着し、相加相乗平均から最大効率の条件は「鉄損=そのときの銅損」、負荷率は \( \alpha=\sqrt{P_{\mathrm{i}}/P_{\mathrm{c}}} \)
- ✓ \( P_{\mathrm{i}}<P_{\mathrm{c}} \) なら最大効率は全負荷より手前で訪れる。配電用変圧器や全日効率の問題はこの性質が前提になっている
鉄損と銅損は、覚える対象というより「何で決まる損失か」を1回押さえれば毎回導き直せる関係です。最大効率の条件も、相加相乗平均をひとつ持っていれば公式として暗記する必要はありません。変圧器の問題で手が止まったときは、電圧側の話なのか電流側の話なのかを分けるところから戻ってみてください。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!
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