皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。
前々回のラプラス変換の記事で繰越となっていました「部分積分」について、今回は書いていきます。なお、前々回分はコチラです。
部分積分とは
2つの関数を一方は積分しつつ、もう一方は微分するという少し変則的な微積分の公式です。
\begin{align}\int^a_b f(x)g(x)\mathrm{d}x=[f(x)G(x)]^a_b-\int^a_b f'(x)G(x)\mathrm{d}x\\ \end{align}
導出方法
\(f(x)\)と\(g(x)\)のどちらを積分して微分すれば良いかが分かなくなることもありますので、簡単に導出する方法を紹介します。
ベースとなるのは2関数微分です。
\begin{align}(f\cdot g)’=f’\cdot g+f\cdot g’\ \end{align}
\begin{align}f\cdot g’=(f\cdot g)’-f’\cdot g\ \end{align}
と移項して、両辺を積分します。
\begin{align}\int^a_b f\cdot g’\mathrm{d}t=\int^a_b (f\cdot g)’\mathrm{d}t-\int^a_b f’\cdot g\mathrm{d}t\ \end{align}
右辺第1項では積分と微分が打ち消し合います。また、\(g\)→\(g’\)の微分関係を\(G\)→\(g\)に1段階シフトさせると、
\begin{align}\int^a_b f\cdot g\mathrm{d}x=[f\cdot G]^a_b-\int^a_b f’\cdot G\mathrm{d}x\ \end{align}
となります。
どういうときに使うのか
電験ではなかなか使う機会が少ない公式です。積分しても形が変わらない\(\mathrm{e}^x\)が入っている関数で、例えば\(x\mathrm{e}^x\)を積分するときに使用します。
\begin{align}\int^a_b x\mathrm{e}^x\mathrm{d}x&=[x\mathrm{e}^x]^a_b-\int^a_b \mathrm{e}^x\mathrm{d}x\\
&=(a\mathrm{e}^a-b\mathrm{e}^b)-[\mathrm{e}^x]^a_b\\
&=(a\mathrm{e}^a-b\mathrm{e}^b)-(\mathrm{e}^a-\mathrm{e}^b)\\
&=(a-1)\mathrm{e}^a-(b-1)\mathrm{e}^b\\
\end{align}
というようにです。
ラプラス変換における部分積分
ラプラス変換の問題を解いていて部分積分を使うことになるとは思いませんでした。新制度(平成7年度)以降の23年間で21回過渡現象の問題が出題された中で、部分積分を使用したのは平成16年度の1回のみでした。
グラフの概形を5種類答えるだけの形式で、最後のグラフの概形を答えるためだけに部分積分以外の計算も含めて、延々とルーズリーフの表裏2枚くらいにわたって計算しました。過渡現象以外の他の問題を考えると明らかに捨てた方が良いので、本番であれば部分積分などせず、適当に答えを選んでおしまいです。
ラプラス変換の計算の中でどのように登場してきたかを話し始めると長くなりますので省略しますが、計算の最後の最後で
\begin{align}\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau\\ \end{align}
を計算する必要が出てきました。
これからが本当の地獄だ…
実は部分積分をよく使う関数として、\(\mathrm{e}^x\)と三角関数を組み合わせた関数があります。今回がそのパターンです。計算を延々としていきますがお付き合い下さい。
\begin{align}&\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau\\
&=\left[\frac{1}{a}\mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau\right]^t_0-\int^t_0 \frac{1}{a}\mathrm{e}^{a\tau}b \cos b\tau \mathrm{d}\tau\\
&=\frac{1}{a}\mathrm{e}^{at}\sin bt-\left(\left[\frac{1}{a^2}\mathrm{e}^{a\tau}b \cos b\tau\right]^t_0+\int^t_0 \frac{1}{a^2}\mathrm{e}^{a\tau}b^2\sin b\tau \mathrm{d}\tau\right)\\
&=\frac{1}{a}\mathrm{e}^{at}\sin bt-\frac{b}{a^2}(\mathrm{e}^{at}\cos bt-1)-\frac{b^2}{a^2}\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau\\
\end{align}
\(\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau\)からスタートしてまた\(\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau\)が登場してきましたので、等式のように扱って以下のような処理をします。
\begin{align}\left(1+\frac{b^2}{a^2}\right)\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau &=\frac{1}{a}\mathrm{e}^{at}\sin bt-\frac{b}{a^2}(\mathrm{e}^{at}\cos bt-1) \\
\int^t_0 \mathrm{e}^{a\tau}\sin b\tau \mathrm{d}\tau &=\frac{1}{1+\frac{b^2}{a^2}}\left[\frac{1}{a}\mathrm{e}^{at}\sin bt-\frac{b}{a^2}(\mathrm{e}^{at}\cos bt-1)\right]\\
&=\frac{1}{a(a^2+b^2)}[a\mathrm{e}^{at}\sin bt-b(\mathrm{e}^{at}\cos bt-1)]\\
\end{align}
こういう計算をしていると、度々途中で何をしているのか分からなくなります笑 そういうといきはもう機械的に計算するしかありません。
まとめ
面倒な計算をしてきましたが、部分積分は電験では知っておく必要が無いかと思います。もちろん電験1種でも使用した記憶はありません。
これを覚えるくらいならば、部分分数分解とかを完璧にした方がまだ実用的ですね笑
それでは次回!