勉強のコツ

サラスの公式はad-bcの発展形で覚えられる|電験の連立方程式を最小暗記で解く

皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。

電験の理論・電力科目では、未知数が3つある連立方程式を解く場面が繰り返し出てきます。このとき役立つのが、3×3の行列式を機械的に計算できる「サラスの公式」です。項が多くて覚えにくい公式に見えますが、実は2×2の行列式(\( ad-bc \))をそのまま3×3に拡張しただけで、新しく覚えることはほとんどありません。本記事では、この考え方をほぼ数学の力のみで電験一種を取得した私の視点で整理します【PR】。

📌 この記事でわかること

  • 2×2の行列式(\( ad-bc \))の意味と、斜めの積の正負の付け方
  • サラスの公式は、その2×2の行列式を3×3に拡張しただけであること
  • サラスの公式が使えなくなる場面と、そこから先の解き方

まず2×2の行列式(ad−bc)から

2元1次の連立方程式を考えます。

\( \begin{aligned} a_1x+b_1y &=c_1 \\ a_2x+b_2y &=c_2 \end{aligned} \)

これを加減法で解くと、\( x \) も \( y \) も分母が同じ \( a_1b_2-a_2b_1 \) という式になります。係数を正方形に並べたこの量を2×2の行列式と呼びます。

\( \begin{vmatrix} a_1 & b_1 \\ a_2 & b_2 \end{vmatrix} = a_1b_2-a_2b_1 \)

やっていることは、斜めに掛けて足し引きするだけです。ポイントはその正負の付け方で、これがのちほどサラスの公式でもそっくり効いてきます。

斜めの積の正負(2×2)

  1. 左上から右下へたどった積 \( a_1b_2 \) は「+」
  2. 右上から左下へたどった積 \( a_2b_1 \) は「−」

2×2の行列式は「右下がりの積から、左下がりの積を引く」だけの単純な操作です。連立方程式を解くときは、この行列式を分母に置き、求めたい文字の列を定数項 \( c_1,c_2 \) に差し替えたものを分子にすれば、そのまま \( x,y \) が求まります(クラメルの公式)。

サラスの公式は、この行列式を3×3に拡張しただけ

未知数が3つに増えた連立方程式でも、発想はまったく変わりません。分母に置く3×3の行列式は、次のように計算します。

\( \begin{vmatrix} a_1 & b_1 & c_1 \\ a_2 & b_2 & c_2 \\ a_3 & b_3 & c_3 \end{vmatrix} \)

サラスの公式(3×3のたすき掛け)

  1. 行列式の右側に1列目・2列目をもう一度書き足して、3行5列にする
  2. 左上から右下へたどる斜め3本の積を、すべて「+」で足す
  3. 右上から左下へたどる斜め3本の積を、すべて「−」で引く

\( \begin{aligned} D=\ &a_1b_2c_3+b_1c_2a_3+c_1a_2b_3 \\ -\ &a_3b_2c_1-b_3c_2a_1-c_3a_2b_1 \end{aligned} \)

ここで注目してほしいのは、2×2とまったく同じルールが効いているという点です。斜めに掛ける操作はそのままで、正負の付け方も「左上から右下=正、右上から左下=負」で変わりません。

  • 斜めに掛ける操作は同じ:2×2でも3×3でも「対角線に沿って掛ける」だけ。違うのは項の数で、2×2は+1本・−1本の2項、3×3は+3本・−3本の6項に増えます。
  • 正負の付け方も同じ:右下がり(左上→右下)の積は+、左下がり(右上→左下)の積は−。2×2の \( a_1b_2 \) が+・\( a_2b_1 \) が−だったのと、まったく同じ対応です。

つまりサラスの公式は独立した新しい公式ではなく、2×2の行列式の「斜めに掛けて正負を付ける」操作を、そのまま項数を増やして3×3に広げたものにすぎません。この \( D \) を分母に置き、求めたい文字の列を定数項に差し替えれば分子になる、という使い方も2元のときと同じです。

ケンタ
ケンタ
この「別の公式を覚えるのではなく、知っている操作を1段広げる」感覚は、加法定理から積和・和積の公式を導く話とまったく同じです。土台を1つ押さえておけば、そこから作り直せます。

電験でこの行列式が登場する場面

3×3の行列式は、複数の起電力を含む回路をループ電流法で解くときに典型的に現れます。ループが3つある回路網では、各ループ電流を未知数とした3元の連立方程式を立てることになり、その分母がまさにサラスの公式で計算できる3×3の行列式です。

  • 3ループ以上の回路網:ループ電流法・網目電流法で未知数が3つ以上になったとき
  • 対称座標法(電験1種二次で頻出):相電圧と対称分(正相・逆相・零相)を結ぶ3×3の変換を扱う場面で、同じ「行列式で解く」考え方の土台になります
ケンタ
ケンタ
対称座標法は変換行列そのものを丸暗記している人が多いと思いますが、私は「3×3の行列式を計算しているだけ」という感覚で扱っています。行列を暗記の対象にしなければ、忘れても立て直せます。

注意!!サラスの公式が使えるのは3次まで

「列を書き足して斜めに足し引きする」というサラスの操作は、2×2と3×3でしか成立しません。3次の行列式は全部で6項の和になっており、これはちょうど斜め3本×2方向(+3本・−3本)の本数と一致します。ところが4次になると項の数は24個に増える一方、書き足せる斜め線は4本×2方向の8本止まりで、大半の項を拾い落としてしまいます。同じやり方をそのまま広げられないのは、このためです。
未知数が4つ以上になる連立方程式では、サラスの公式ではなく余因子展開や掃き出し法(ガウスの消去法)で行列式を計算することになります。電験の回路計算で未知数が4つを超える場面はそう多くありませんが、斜めに掛ける方法が通用するのは3次までという境界は、混同しないように覚えておく必要があります。

手を動かして型を体に入れる

斜めに掛けて正負を付ける形は、見て理解しても、実際の問題で係数を正しく並べる作業は手を動かした回数がものを言います。符号を1つ間違えるだけで答えが変わるため、慣れるまでは検算を惜しまないことが大切です。とくに対称座標法を使う電験1種二次試験(電力・管理)では、この行列式の計算が答案の土台になります。過去問で実際の設問に沿って手を動かすことが、いちばんの近道です。

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まとめ

  • 2×2の行列式(\( ad-bc \))は「右下がりの積 − 左下がりの積」で、斜めに掛けて正負を付けるだけ
  • サラスの公式は、その2×2の行列式を3×3に拡張したもの。斜めに掛ける操作も正負の付け方も同じで、増えるのは項の数だけ
  • ただし斜めに掛ける方法が成立するのは3次まで。4次以上は余因子展開や掃き出し法に切り替える

サラスの公式は、2元用・3元用を別物として覚える必要はなく、2×2の行列式の発想を1段広げただけです。ループ電流法や対称座標法で未知数が増えたときも、「右下がりは+、左下がりは−」という同じ型を当てはめていってください。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!

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