皆さまお疲れさまです。ケンタ(@den1_tanaoroshi)です。
電験の理論科目では「負荷で消費する電力が最大になるときの抵抗値と、そのときの電力を求めよ」という問題が繰り返し出題されます。素直に微分してもたどり着けますが、本番の時間配分を考えると微分は決して軽い作業ではありません。本記事では、この手の最大値を微分せずに求める方法を、ほぼ数学の力のみで電験一種を取得した私の視点で整理します【PR】。
📌 この記事でわかること
- ✓ 相加相乗平均で最大電力を求める手順
- ✓ リアクタンスがある場合の負荷抵抗の決まり方
- ✓ 微分で解く場合と比べた手数の違い
相加相乗平均のおさらい
まずは道具の確認です。正の数 \( a \)・\( b \) について、次の関係が成り立ちます。
\( \begin{aligned} \frac{a+b}{2} &\geqq \sqrt{ab} \\ a+b &\geqq 2\sqrt{ab} \end{aligned} \)
重要なのは、等号が成り立つのが \( a=b \) のときだけだという点です。つまり「和の最小値」と「そのときの条件」が同時に手に入ります。最大電力の問題は、この最小値を分母に作り込むことで解けてしまいます。
使うときの3条件
- \( a \)・\( b \) がともに正であること(抵抗値なので通常は満たされます)
- 積 \( ab \) が定数になること(変数が残ると最小値が決まりません)
- 等号成立の値が定義域に入っていること(負荷抵抗に上限がある問題では要確認)
手順は「分子の \( R \) で割る」だけ
負荷抵抗 \( R \) で消費する電力は、たいてい \( P=\dfrac{(定数)\times R}{(Rの2次式)} \) の形になります。ここで分子・分母を \( R \) で割ると、分母に \( R+\dfrac{定数}{R} \) という形が現れます。あとは相加相乗平均で分母を最小化すれば、\( P \) が最大になります。
解く手順
- \( P \) を \( \dfrac{定数 \times R}{Rの2次式} \) の形で立てる
- 分子・分母を \( R \) で割り、分母を \( R+\dfrac{k}{R}+(定数) \) に整形する
- 相加相乗平均で \( R+\dfrac{k}{R}\geqq 2\sqrt{k} \) とし、等号条件 \( R=\sqrt{k} \) を読む
分母を最小にすれば分数全体は最大になる、という当たり前の関係を使っているだけです。やっていることは「最大値の問題を、和の最小値の問題に翻訳する」ことに尽きます。
例題1:内部抵抗だけの回路
起電力 \( E=4.8\,\mathrm{V} \)、内部抵抗 \( r=1.6\,\Omega \) の電源に、可変の負荷抵抗 \( R \) をつないだ場合を考えます。負荷で消費する電力は次のとおりです。
\( P=\dfrac{E^{2}R}{(R+r)^{2}}=\dfrac{23.04R}{R^{2}+3.2R+2.56} \)
分子・分母を \( R \) で割ります。
\( P=\dfrac{23.04}{R+3.2+\dfrac{2.56}{R}} \)
分母のうち \( R \) と \( \dfrac{2.56}{R} \) は、積が \( 2.56 \) の定数になっています。ここに相加相乗平均を当てます。
\( \begin{aligned} R+\dfrac{2.56}{R} &\geqq 2\sqrt{2.56}=3.2 \\ \therefore\ P &\leqq \dfrac{23.04}{3.2+3.2}=3.6\,\mathrm{W} \end{aligned} \)
等号が成り立つのは \( R=\dfrac{2.56}{R} \)、すなわち \( R=1.6\,\Omega \) のときです。内部抵抗と同じ値になり、よく知られた「最大電力の定理」と一致します。
例題2:リアクタンスがある場合
内部インピーダンスが \( \dot{Z}=r+\mathrm{j}x \)(\( r=6\,\Omega \)、\( x=8\,\Omega \))で、負荷は抵抗 \( R \) のみが可変という条件を考えます。電源電圧は \( E=100\,\mathrm{V} \) とします。このとき負荷で消費する電力は次のようになります。
\( P=\dfrac{E^{2}R}{(R+r)^{2}+x^{2}} \)
分子・分母を \( R \) で割って整理します。
\( P=\dfrac{E^{2}}{R+\dfrac{r^{2}+x^{2}}{R}+2r}=\dfrac{10000}{R+\dfrac{100}{R}+12} \)
再び相加相乗平均です。
\( \begin{aligned} R+\dfrac{100}{R} &\geqq 2\sqrt{100}=20 \\ \therefore\ P &\leqq \dfrac{10000}{20+12}=312.5\,\mathrm{W} \end{aligned} \)
等号成立は \( R=\sqrt{100}=10\,\Omega \)、つまり \( R=\sqrt{r^{2}+x^{2}}=|\dot{Z}| \) のときです。負荷抵抗のみが可変のときの答えは \( R=r \) ではなく \( R=|\dot{Z}| \) となります。ここを「最大電力の定理は \( R=r \)」と暗記だけで処理すると、誤答につながります。
同じ答えを微分で出そうとすると、商の微分を実行して分子を整理し、さらに \( R \) の2次方程式を解くことになります。手順が長い分だけ、計算ミスの入り口も増えます。微分そのものの考え方については電験で微分積分はどこで使う?で整理していますので、正攻法の位置づけを確認したい場合はあわせてご覧ください。
私自身、技術士一次試験(電気電子部門)の過去問に再挑戦した際にも、リアクタンスが入った可変抵抗器の消費電力が最大になる条件を問う問題に出会いました。それまで解いた経験のない形でしたが、基本に忠実に立式して相加相乗平均で処理しています。見慣れない回路でも、立式さえできればこの手順はそのまま通用します。
なお、数学の道具としての相加相乗平均には「等号が成り立つ値が、使える範囲に入っていること」という前提があります。可変範囲に上限・下限が付いた問題では、そこだけ確認しておくと安全です。式変形の選び方そのものについては意外と陥りがち?!式展開のワナでも触れています。
時短テクは本番前に手に馴染ませる
この種の手法は、知識として知っているだけでは本番で出てきません。過去問で実際に「分子の \( R \) で割る」動作を数回なぞって、はじめて反射的に手が動くようになります。計算時間そのものを削る工夫は計算問題を素早く解くには?、試験直前に効く細かい対策は【試験前】知っておくと5点くらいは点数アップが見込めるかもしれないtips集にまとめていますので、仕上げの時期に合わせてご活用ください。
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まとめ
- ✓ 最大電力の問題は、分子・分母を \( R \) で割ると相加相乗平均が使える形になる
- ✓ 等号成立条件がそのまま「最大となる負荷抵抗」を与えてくれる
- ✓ リアクタンスがあり \( R \) のみ可変なら、答えは \( R=r \) ではなく \( R=|\dot{Z}| \)
- ✓ 等号が成り立つ値が、使える範囲に入っているかだけは確認する
最大電力の問題は、微分を使わなくても分母を \( R+\dfrac{k}{R} \) の形に整えるだけで答えにたどり着けます。公式として結論だけを覚えるのではなく、ご自身の手で分母を整形する流れを一度なぞっておくと、条件が変わった問題にも対応できるようになります。引き続き当ブログをよろしくお願いいたします!
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